第29回 リスクアセスメントについて
最近よく「リスクアセスメント」という言葉を耳にしませんか?
「リスク(危険)」を「アセスメント(評価)」するとはどういうことでしょうか。
今まで行ってきた「危険予知訓練」や「ヒヤリハット活動」とどのように違うのでしょうか。
「危険予知訓練」は現場にどのような危険が潜んでいるかを見つけ出して対策を立てることで、特に危険に対する感受性を高める訓練ということができます。
これに対して「リスクアセスメント」は危険を特定するだけでなく、その危険を見積もり・評価して、それに沿って優先順位をきめて対策を検討・実施し、そしてその結果どれほど危険度を下げられたかを定量的に評価、記録していく手法です。
単純にリスクがある・ない、ではなく、その度合いや改善の効果を判断・評価する点が特徴といえます。
危険の洗い出しについては、例えばフォークリフトの運転で転倒しそうとか、足場から落ちそう、などといった作業現場での「気づき」でリスクを予見するだけではなく、そもそもなぜ転倒しそうな状況に陥るのか、足場が落下しそうになるのかなど、人と作業のかかわりを調査し「なぜ」を深く分析することで危険度の低減に向けた対策についての貢献度を明らかにすることができます。
リスクの見積もり・評価では、その危険がもたらす被害や障害の重大さと発生頻度を勘案し、基本的にリスクの高い案件から優先順位をつけて、その対策を検討していきます。
見積もり・評価のやり方はそれぞれの現場に応じて様々な方法がありますが、まず最初に行うことは評価の方法や配点などについて社内で合意、決定することです。決定された方法に従って危険レベルの見積もり評価を実施していきます。見積もり評価の一例を次に示します。
ところで作業現場での安全の確保に向けて、労働安全衛生法では「事業者は建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない(労働安全衛生法 第28条の2 抜粋)」 とあり、この調査と措置が努力義務として課せられています。
調査及び措置検討の実施タイミングとしては労働安全衛生規則 第24条の11及び12に;
1:建設物を設置し、移転し、変更し、又は解体するとき。
2:設備、原材料等を新規に採用し、又は変更するとき。
3:作業方法又は作業手順を新規に採用し、又は変更するとき。
4:建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき。
「安全」といっても、実際の作業において絶対に安全な状況というのは存在しません。
安全な状況とはISO/IECガイド51で「許容できないリスクがないこと」と定義されています。
つまりリスクがあっても「まぁ、我慢できる」レベルまで危険度が下げられていればそれは安全な状況であるということができ、そこで法令で定める調査・措置に際しては、リスクアセスメントによって危険度のレベルを数値化することが効果的であることがわかります。
リスクの評価には様々な方法がありますが、どのようなリスクが存在し、どの程度であれば許容できるのかについては職場ごとに異なる為、実際の調査と措置の策定は職長を中心にチームとして、現場にあったやり方で実施していくこと、そして対策の効果測定をはじめ継続した活動として進めていくことが重要です。
特にリスクアセスメントを含めた現場の安全確保について現場最前線の指揮官である職長の役割は重要です。職長の役割については「知っていますか」の第28回をご参照ください。
キャタピラー教習所では職長に対する安全衛生教育を実施しており、その中でこのリスクアセスメントも学ぶことができます。
◇詳しくは、お近くのキャタピラー教習所までお問い合わせください。
シリーズタイトル | |
1 | 刈払機の資格 |
2 | 保護具の話 ヘルメット |
3 | 保護具の話 安全帯 |
4 | 振動工具の資格 |
5 | フォークリフトの資格 |
6 | 移動式クレーンの資格 |
7 | 玉掛けの資格 |
8 | 玉掛けの資格 その2 |
9 | 不整地運搬車の資格 |
10 | 高所作業車の資格 |
11 | ロープ高所作業の資格 |
12 | 自動車用タイヤの空気充てん作業の資格 |
13 | 『はい作業』について |
14 | 足場の組立て等の資格 |
15 | 低圧電気取扱いの資格について |
16 | 研削といし取替え業務の資格 |
17 | 締固め(ローラー)の資格ついて |
18 | 伐木作業の資格について |
19 | 粉じん作業の資格について |
20 | 酸素欠乏危険作業の資格について |
21 | フルハーネス型墜落制止用器具の資格について |
22 | 伐木作業の資格について-2 2019年改正 |
23 | 労働安全衛生資格の「再教育」について |
24 | アーク溶接作業の資格について |
25 | 保護具の話 墜落制止用器具 |
26 | 熱中症予防の資格について |
27 | ガス溶接作業の資格について |
28 | 職長について |